このページでは、NHKテキスト「腸内細菌のチカラ」の内容を、自分でわかりやすいように、端的に整理して、見解を書き出していきます。
もくじ
「恐怖」という情動
- なぜ虫が怖いのか
- 恐怖には、「生まれつきのもの」「身を脅かす出来事と結びついたもの」がある
- しかし、多くの猿の場合、蛇を恐れるのは「生まれつき」でも「学習したもの」でもないことがわかってきた
- 飼育猿に「蛇を怖がっている野生猿の映像」を見せると、蛇を怖がる
- 飼育猿に「花を怖がっている野生猿の映像」を見せても、花を怖がらない
- 恐怖を感じやすいものと恐怖を感じにくいものがある
- これらより、恐怖には「先天的なもの」「後天的に学習して獲得するもの」「情動反応が強く出るために恐怖となりやすいもの」の3つがある
人は恐怖に動かされる
- 恐怖は、人を動かす最も強力な方法である
- 日本の清潔思考は、後天的に学習した恐怖から生まれた
- このシステムを利用しているケースがあることを忘れてはいけない
常在細菌の役割
- 腸内フローラや免疫の研究をしていると、「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」という言葉が離れなくなる
- 異物は入ってくると排除されるが、常在菌は排除されないのはなぜか?
- 常在細菌叢は、皮膚、腸内、などにも存在している
- 皮膚や腸内には、粘液や上皮細胞が構成するバリアがある
- 常在細菌は、バリアに乗っかっている
- このバリアによって、血液中にある免疫細胞と出会わず、排除されない仕組みになっている
- また、常在細菌叢が先住民的な役割を果たすため、異物は定住できない
- (椅子取りゲームやオセロみたいになっている)
- つまり、あまりにも清潔すぎたり、殺菌や消毒をしてしまうと、常在菌を殺菌してしまったり、バリアを失ってしまうため、異物の侵入や定住を招いてしまう恐れがあることを、忘れてはいけない(*感染症の流行などの異常時は、しかるべき対応をしよう!)
不安を感じるとき、脳内では
- かつて「ノイローゼ」といわれた病気がある
- 現在は「不安障害」と呼ばれている
- この原因は、脳内の神経伝達物質である「GABAの濃度低下」がある
- 他には、セロトニンの濃度減少も不安を作るといわれている
- このメカニズムから治療が行われている
ある例え話
「ある日、宇宙人が地球に降り立ちました。最初に出会った地球人は、本を見て泣いていました。『この本に、地球人の行動を変化させる何かがある』と思った宇宙人は、その人から本を取り上げ、自分の星へと持ち帰りました。
宇宙人は彼らの持つ最新の装置で本を徹底的に調べました。インクの成分を取り出して分析、定量したり、紙を溶かして顕微鏡で観察したり、強度を測ってみたり、ありとあらゆる実験をしました。しかし、その本からは特に人間の行動を変化させるような物質は見当たらず、宇宙人はとても不思議がりました」
これは、健康診断で血液検査をし、その定量結果だけをみて一喜一憂しているのと同じことのように思いませんか?これでは、本質的な解決にはつながりません。
脳がつくる、恐怖に対する不安
- 「恐怖」と「恐怖に対する不安」には、決定的な違いがある
- 「恐怖」とは、スピードを出しすぎてカーブを曲がるときに感じる情動
- 「恐怖に対する不安」とは、風評被害などの「架空の恐怖」
腸内細菌と脳の相互反応
- 腸内細菌との共生によって脳を大きくできた人間は、道具を使い、言葉を操るようになった
- ヒトは、生物との付き合いを選り好みするようになった
- その結果、自分にとって好ましく思う生物種だけを生かし、そうではないものは有無を言わさず殺す、という行動をとるようになった
- 例えば、回虫などの寄生虫をお腹に飼っていた時代に比べると、花粉症やアトピー性皮膚炎に悩む人が爆発的に増えている
- 最近の研究では、腸内細菌と脳の相互反応についてもわかってきた
無菌マウスでの実験
- 腸内細菌が学習や記憶にどのように影響を与えているのか
- 無菌マウスと正常マウスで高架式十字迷路での反応を比較
- 無菌マウスの方が不安を感じている行動が多い
- > セロトニンの受容体が少ない(海馬の処理に関連)
- > グルタミン酸の受容体も少ない(情動処理に関連)
- グルタミン酸は学習と記憶に不可欠な物質で、この物質が不足すると認知的な作業も低下する
これらのことから言えることは、
- 私たちが良かれと思って作ってきた文明社会は、私たちをより不安にさせているという結果に陥っている
- 特に「恐怖に対しての不安」が社会を大きく動かしている
- その原因の1つとして、腸内細菌が安心して住めない環境を作ってしまったことが挙げられるのではないか
- 言い換えるなら、本来恐れることのないものに恐怖を感じてしまうのは、腸などの身体感覚からの意見を無視して、脳が暴走している結果とも言えるのではないか
腸内環境の観点から考えてみると・・・
- 腸(体の声)は、多様性があり、バランスの良い腸内細菌を欲しがっている
- 脳(が作り出す不安の声)の暴走によって、腸内細菌を減らすような環境を作り上げてしまった
昔の日本の環境と比べてみると・・・
- 栄養状態も衛生環境も良くなっているはずなのに
- うつ病などの精神疾患は増加傾向にある
- 60年前の腸内環境は、いまよりもよかったはず
- 単純に、腸内細菌の数と精神疾患の患者数が反比例するとは言えないが、マウスの実験から見ても、重要な役割を果たしていることは明らかだと考えられる
・・・まとめると
- 腸内細菌のバランスを整えること
- 腸の感覚を大切にすること
- 腸で思考すること
これらによって、「恐怖に対しての不安(=脳が作り出す架空の不安、暴走)」は抑えることができるのではないか
そういえば、
- 腹が立つ
- 腸が煮えくり返る
- 腹を決める
- 腹黒い
という慣用句は、「おなか」と「心」が関係していますよね。これはいったいなぜなのでしょうか。次回に続きます。
プラーナの感想
「恐怖に対する架空の不安」は脳が作り出す感情のようです。不安を感じにくくするためには、日々をていねいに、そして健康的に暮らすことが、不安を解消することにつながる、本質的な解決になる、と考えられますが、ど正論すぎて、受け止められないこともあると思いました。
しかしながら、これもまた「腸を整える」ことで、ど正論を受け止められるように、体質改善できる、という希望でもあるように思いました。
常在菌と、日頃から上手にお付き合いしていくことが、腸内環境を含めて、肌や髪、頭皮、を自然な状態に保てるのだということが理解できました。昔は衛生環境が整っていないせいで、余計な感染症や食中毒なんかも多かったのだと思いますが、それが行き過ぎて、過剰な潔癖性、無菌状態になるというのも、問題だということですね。
逆に、潔癖すぎて無菌だと、「空白」「からっぽ」な状態ですから、悪い奴に付け入る隙を与えることにもなりかねない、ということです。
また、ヒトのエネルギーは、「解糖系」と「ミトコンドリア系」のハイブリッドということから、ヒトという存在は、「脳」と「腸」の2つの制御系(システム)があるというのも不自然ではないように思いました。このことから、「頭で考えるのか」「腸で考えるのか」という、2つの判断(システム)を上手に使い分けることで、じぶんらしく、そして、なりたいじぶんに近づいていけるのではないかと思います。
とくにこれまでは、「脳がヒトのCEOだ」というイメージがあって、さまざまなメソッドが生まれてきましたが、ガンや難病、うつ病、ADHDなどの、昔にはあまり目立たなかった症状が減らないということからも、我々のアプローチが適切ではなかったことを示しているのだと感じました。
ヒトを企業に例えるなら、CEO(脳)が暴走してブラック企業化し、社員たちが疲弊して、悪玉菌に日和見菌が加担してしまい、職場環境(腸)が破綻してきている、と考えることもできます。
医療技術はトライ&エラーを繰り返し、確実に技術は進歩していますし、むかし分からなかったことが明らかになっていることもたくさんあります。
そういった意味でも、これまで積み重ねてきたことも大切にしながら、新しい発見も上手に取り入れて、「バランスを整える」のが、僕たちにできる唯一の対抗手段なのではないかと思いました。
- 日頃の生活習慣を整える
- 潔癖すぎない範囲で、メリハリをつけながら、衛生環境を整える
- 脳に依存しすぎないようにする
- 腸のことを大切にしてあげる
- 腸内細菌や常在菌と仲良くする
こういったことが、「恐怖」の役割であるだろうと考えたいと思いました。